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JTCでは素晴らしいアイディアの実現が遅れる
誰が見ても素晴らしいアイディアでもJTC(例えば大企業)では実現が遅れる。
費用対効果が見合わない。
実現に長い時間がかかる。
いつも見てきた光景である。
この理由は組織の構造的な利害対立にある。
決定の遅れは個人の能力不足が原因ではない。
私の経験でも同じことを感じる。
組織が最適化しようとする目的の違いが原因である。
しかし解決策を知っても現実的な実行は極めて困難だ。
もはや不可能と言ってよい。
上記、なぜなのかを個人的に考えてみた。
目的は、よく聞いてきた内容から、もう少し深堀することである。
決定の遅れを生む「リスク回避」と「減点主義」
大企業で意思決定が遅れる本質はリスク回避である [1]。
よくある話・その①である。
多くのJTCは減点主義の評価制度を採用している。
挑戦して成功した際のリターンは限定的だ。
社会的に意義のある発明をした個人が、
本当に見合うインセンティブを得られた実績があるか、
過去の結果を見れば一目瞭然であろう。
一方で失敗した際のペナルティは著しく大きい。
担当者や管理職は失敗の責任を恐れて決断を避ける。
部門最適の壁と膨大な「根回し」
新しいアイディアは既存の業務や権限を脅かす。
よくある話・その②である。
既存事業の予算や人間関係など、悪く言えば既得権益が存在する。
新企画はこれらの既得権益と摩擦を起こす。
全社最適より部門最適を優先する構造が存在する。
俗に言う「縦割り」「サイロ化」である。
組織が巨大になるにつれ出来上がった、業務の全体最適化の完成形であると感じる。
私が社会人になる前から、JTCが長い時間をかけて少しずつ成熟させていったものである。
他部門の抵抗を抑えるために膨大な調整が必要だ。
この見えない事前調整が根回しであり時間を奪う。
酷い時には事前調整の打ち合わせが2回やっても足らない部署だってある。いくら生成AIが発達したとはいえ、資料作成などの準備時間を含めるとそれなりに時間がかかる。
目に見える無駄の一つと言える。
稟議制度は個人の責任を組織全体へ分散させる。
組織としては、あるべき姿である。
しかし、時間をかければかけるほど新しいアイディアは陳腐化していく。
目新しさよりも嫌なにおいを放ち続けて腐っていく。
(そういった意味では目新しさは保ち続けているといえる)
JTCとベンチャーの価値基準の違い
JTCとベンチャーでは最優先する価値基準が異なる [2]。
まとめてみた。
表でアウトプットしたかったが、スマホでコピペできずだったので、テキストで勘弁いただきたい。
ベンチャーは市場への早期投入とリターンを狙う。
JTCは失敗の防止と全社的な整合性を重視する。
ベンチャーは経営者や担当者の個人裁量で動く。
JTCは多段階の合意形成と組織決定を必要とする。
ベンチャーは守るべき既得権益がほぼない。
JTCは守るべき既存事業や顧客が多数存在する。
速度の違いは個人の能力ではなく構造の違いである。
ボトムアップ改革の限界と「例外措置」の罠
大企業の改革成功例はトップの政治力による例外だ。
トップの強力な権限で既存ルールを踏み越える。
参加した色々なDX成功事例のセミナーに参加してでた考えてある。
しかし既存の評価制度自体は書き換わっていない。
組織の通常プロセスは変革を拒絶するように働く。
その中で例外を推し進めようとする人がいるとしよう。
たとえば、組織的な横串的な立ち位置をもった人がいるとする。
そのような人は華々しい結果を出せるのだろうか。
予測の通りだが、大抵は失敗をする。
その失敗は関わった人たちを拡声器として、驚くほどのスピードで関係者に広まる。
例外を推し進めようとする人はどうなるのだろうか。
物凄い早さで委縮するだろう。
だんだんと、やっていることに対してリターン(権限・給与ふくめた待遇)が見合わないと感じるからである。
推し進めようとした例外は収束を経て失敗に終わる。
どの立場の人かは知る由もないが、結果が出なかったトップは交代となる。
交代したトップは前回の失敗をたてにする。
停滞状態へ回帰である。
仕組みが変わらない限りボトムアップの変革は不可能である。
一方、超まれであるが、それでも変革が成功するケースもある。
一番最後の章にある方の存在である。
話がそれるのでここまでにし、次の話に進む。
理論上の解決策:「制度的な組織分離」
今まで述べた内容はもはやありきたりである。
耳にタコができていると思う。
さらに耳にタコを増やそう。
理論上、解はある。解は組織の完全な分離である [3]。
既存組織のルールや制約から完全に独立させる。
本体の評価軸や稟議ルートから距離を置くのである。
日立製作所のCVC(日立ベンチャーズ)が好例だ [4]。
大企業が自社内の既存ルールやP/Lの制約を回避し、
外部連携やCVCを用いて事業化を加速させている。
本体から切り離すことで意思決定の速度を保つ。
外部の知見と本体の資金力を組み合わせる手法である。
いままでだったら何も意識してこなかったが、最近になって感じてきた内容である。
経営者は確かに大きな規模・責任を伴う決断をしているなと感じていた。
ただ、やっていることは誰でも思いつくシンプルなものだなとも思えるようになった。
私は規模・責任に圧倒されていただけだったようである。
理論と現実のギャップ①:「人・風土」を切り離せない
ココからようやく深堀のフェーズである。
解はでた。
うまくいくのか。
私はうまくいかないと考える。
理由は新組織に送り込まれるのは本体のJTC社員なケースがほとんどだからである。
そしてこういった場合に送られる人材は既存部署から煙たがられた、
いわば邪魔者の烙印を押された人だったりする。
新しい部署は人材の掃きだめみたいな所として見られたりする。
とはいえ、煙たがられた人材は一味違う観点をもっているのでポテンシャルがあるはずだと少しばかり期待も出てくるものである。
しかし、そうは問屋が卸さないことが大抵である。
煙たがられた人材でさえ、既存の社風や減点主義の思考パターンはそのまま持ち込まれる。
その環境で育ってきたからである。
癖のようなものである。
出向者は失敗を意識して保身に走る。
結局は新組織でも保身と遅延が再現される。
外部人材へ権限を完全に渡す決断も本体にはできない。
新しいハコを作れても「人の風土」を切り離すことは不可能に近い。
しかも、別会社であれば子会社の立ち位置のはずだ。
親会社(異動元)よりも待遇は悪いことが常だ。
その中でイノベーションだ改革だと言われても、
当の本人の意識は島流しにあったと感じる被害者の意識をはがすことはできないだろう。
理論と現実のギャップ②:P/L(損益)の呪縛から逃れられない
先ほど出した解に対し、もう一つギャップがある。
P/L(損益)の呪縛である。
実際の経営陣は短期のP/L悪化を極度に嫌がる。
「費用対効果が悪い」「回収の保証がない」と批判される。
既存事業の部長層から強烈な反対を受けて頓挫する。
その対応として「B/S投資(貸借対照表)への切り替え」が存在する。
投資した内容を開発資産化や出資という扱いにする。
悪いく言えば、株主やメディアの印象を少しでも良くするのである。
(私は経営に詳しくないので間違えたら申し訳ない)
しかし、これも理論上の空論に過ぎない。
結局は単年のP/L評価に縛られ、投資は縮小する。
構造的限界:多くのJTCで変革は絶望的である
組織やP/Lの分離は教科書通りの正解だ。
しかし、その決断を実行すること自体が不可能である。
JTCの意思決定構造そのものが変革を拒絶するからだ。
保身の風土、P/Lの呪縛、既得権益の抵抗。
これらをすべて突破できるJTCは極めて稀だ。
組織が大きくなるにつれ熟成されていった「縦割り」「サイロ化」を壊すことは大きなリスクだ。
「縦割り」「サイロ化」は当時必要だから出来上がった形だからだ。
今の時代にそぐわなくなっただけで、存在自体を責めてはいけない。
しかしながら、現状の構造のままでは、ほぼ全てのJTCで変革は詰んでいるのは不可避だ。
これが私の現状の結論である。
それでも不可能に挑む「動く人」への願い
最後は現状ではなく今後の話をしたい。
暗い話で終わらせたくないのが私の心情である。
絵空事はやらねばイノベーションにならない。
不可能な構造だからと諦めてしまえば終わりである。
既得権益にも縛られずやるべきことに集中する人がいる。
どれだけ組織が重くとも愚直に行動する人は存在する。
私のようにごめん嘘。
今は不可能に見えても、その行動こそが希望だ。
私はそんな「動ける人」に光があたる未来を願う。
ここ30年は無理だと思うが、JTCでも挑戦者が正当に評価される時代がくることを信じている。
参考文献(References)
[1] Christensen, C. M. (1997). The Innovator's Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail. Harvard Business School Press.
[2] March, J. G. (1991). Exploration and exploitation in organizational learning. Organization Science, 2(1), 71-87. https://doi.org/10.1287/orsc.2.1.71
[3] O'Reilly, C. A., & Tushman, M. L. (2004). The ambidextrous organization. Harvard Business Review, 82(4), 74-81.
[4] Chesbrough, H. W. (2003). Open Innovation: The New Imperative for Creating and Profiting from Technology. Harvard Business School Press.


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