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【LTspice】ダイオードの温度特性の再現(順方向・逆方向Vf-If特性)【モデルを自作】

【LTspice】ダイオードの温度特性の再現(順方向・逆方向Vf-If特性)【モデルを自作】 電子回路(LTspice)
この記事は約14分で読めます。

東芝製1SV229(参考文献1)1SS387(参考文献2)を題材に、ダイオードのVf-If特性の温度特性を再現しました。
温度特性の理論式とそれを用いたシミュレーション結果を載せています。
今回はEXCELのソルバを用いていません。それでも良い精度で再現できます。

温度特性を再現する前に、次の元記事の順方向・逆方向のVf-If特性を再現する必要があります。
こちらはEXCELのソルバを使用します。
↓元記事↓

結果

1SV229(参考文献1)は逆方向のみ、1SS387(参考文献2)は順方向・逆方向の両方を再現しました。
1SS229はデータシートに逆方向の特性のみの公開のため、再現も逆方向のみです。
1SS229の方が順方向の特性がないためパラメータが一義に決まらず、苦労しました 。

1SV229
1SS387

↑1SS387の回路図は記述が汚いです。
←1SV229の記述の方が整っていますので、
 優先で参照してください。

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パラメータの温度補正換算式

温度特性の再現は前提は基準温度(大抵25℃)のパラメータが決定した後での実施になります。

温度特性の対象となるパラメータは\(\displaystyle IKF, Rs, Is, Isr, VJ, m, BV\)です。
各パラメータは以降に示す温度の換算式に従います(正確に言うと、従わせています)。

対象のパラメータの補正係数の値を必ずいれないといけないか言えばそうでもないです。
補正係数は0のままの場合もあります。つまり、基準温度(大抵25℃)から変化しない場合もあります。

ややこしい内容があります。
パラメータN, Nrは基準温度で決定した値(大抵25℃)をそのまま使用します。
一方で、Is, Isrの計算につかうN, Nrは温度補正をした順方向のNの値のみを使用します。

IKF

\(\displaystyle IKF_{(T1)}=IKF_{(T0)}*(1+\color{red}{T_{ikf}}*(T1-T0)\)

変数の説明

\(\displaystyle IKF_{(T1)}\):温度T1の時のHigh-injection knee current
\(\displaystyle IKF_{(T0)}\):
 温度T0の時のHigh-injection knee current.(過去記事内容で決定)
 大抵T0は25℃(メーカのデータシートによる)
\(\displaystyle \color{red}{T_{ikf}}\):温度係数

Rs

\(\displaystyle Rs_{(T1)}=Rs_{(T0)}*(1+\color{red}{T_{rs1}}*(T1-T0)\)

変数の説明

\(\displaystyle BV_{(T1)}\):温度T1の時のReverse breakdown voltage
\(\displaystyle BV_{(T0)}\):
 温度T0の時のReverse breakdown voltage(過去記事内容で決定)
 大抵T0は25℃(メーカのデータシートによる)
\(\displaystyle \color{red}{T_{rs1}}\):温度係数

LTspiceのHelpを参照すると、LTspice自体に\(\displaystyle Rs\)用の温度係数\(\displaystyle Trs1\):温度差の線形増加用の係数と\(\displaystyle Trs2\):温度差の2乗で変化するを備えていますが、今回は使用しませんでした。
理由は次の2点です。
・温度差の2乗の項はコントロールが難しい(今回は手作業のパラメータ調整のため)
・私としては定義の内容を明示したかったため
 LTspiceのHelpに表記されている”Units(単位)”と参考文献4の\(\displaystyle Rs\)の式より、おそらくLTspiceの内部に組み込まれているモデル式も同様と考えていますが、はっきりとそのモデル式である、という記載が確認できなかったため、今回の場合は\(\displaystyle T_{rs1}\):温度差の線形増加用の片側のみを使用するに至りました。

Is

\(\displaystyle Isr_{(T1)}=Isr_{(T0)}*(\frac{T1}{T0})^\frac{\color{red}{Is_{coff}}*\color{red}{XTI}}{\color{red}{N_{(T1)}}}*e^{(\frac{-q*Eg_{(300)}}{\color{red}{N_{(T1)}}*k*T1})(1-\frac{T1}{T0})}\)

変数の説明

オリジナルな要素は\(\displaystyle \color{red}{Isr_{coff}}\)です。

\(\displaystyle Isr_{(T1)}\):温度T1の時のsaturation current
\(\displaystyle Isr_{(T0)}\):
 温度T0の時のsaturation current(過去記事内容で決定)
 大抵T0は25℃(メーカのデータシートによる)
\(\displaystyle \color{red}{Is_{coff}}\):XTIの補正係数(カワッターのオリジナル係数)
\(\displaystyle \color{red}{XTI}\):Isrの温度補正係数
 LTspiceのHelpではSat.-current temp. expの表記
 ※Saturation current temperature exponentの略
  バンドギャップEGとバンド端の実効状態密度に関する温度指数
\(\displaystyle \color{red}{N_{(T1)}}\):
 温度T1の時のEmission coefficient
\(\displaystyle Eg_{(300)}\):
 温度300Kの時のactivation energy(活性化エネルギー)
 有効桁数を小数点第3位とした場合、値は1.115(詳細はパラメータ\(\displaystyle VJ\)の節を参照)

\(\displaystyle Is_{coff}\)は私がオリジナルでつけた変数です。
LTspiceHelpを参照すると、XTIはpn接合の場合3.0, ショットキーバリアダイオードの場合 2.0となっていますが、今回はこれに限ったものではなかったためです。1SV229(参考文献1)で顕著に現れました。
これは私の推測ですが、昨今は半導体の製造技術の進歩が目覚ましいため、spiceパラメータにおいても一概にいえないのでは、と考えています。

\(\displaystyle N_{(T1)}\)は後述する換算式で温度ごとの値に変換します。

Isr

\(\displaystyle Isr_{(T1)}=Isr_{(T0)}*(\frac{T1}{T0})^\frac{\color{red}{Isr_{coff}}*\color{red}{XTI}}{\color{red}{N_{(T1)}}}*e^{(\frac{-q*Eg_{(300)}}{\color{red}{N_{(T1)}}*k*T1})(1-\frac{T1}{T0})}\)

変数の説明

\(\displaystyle \color{red}{Isr_{coff}}\)が\(\displaystyle Is_{(T1)}\)と異なります。
それ以外は同じです。

\(\displaystyle Isr_{(T1)}\):温度T1の時のsaturation current
\(\displaystyle Isr_{(T0)}\):
 温度T0の時のsaturation current(過去記事内容で決定)
 大抵T0は25℃(メーカのデータシートによる)
\(\displaystyle \color{red}{Isr_{coff}}\):XTIの補正係数(カワッターのオリジナル係数)
\(\displaystyle \color{red}{XTI}\):Isrの温度補正係数
 LTspiceのHelpではSat.-current temp. expの表記
 ※Saturation current temperature exponentの略
  バンドギャップEGとバンド端の実効状態密度に関する温度指数
\(\displaystyle \color{red}{N_{(T1)}}\):
 温度T1の時のEmission coefficient
 逆方向のパラメータですが、順方向の値を使用
\(\displaystyle Eg_{(300)}\):
 温度300Kの時のactivation energy(活性化エネルギー)
 有効桁数を小数点第3位とした場合、値は1.115(詳細はパラメータ\(\displaystyle VJ\)の節を参照)

ここでも私がオリジナルでつけた変数\(\displaystyle \color{red}{Isr_{coff}}\)があります。
要領は\(\displaystyle Is\)の節でのべた内容と同じです。

逆特性のEmission coefficient は順方向と同じ\(\displaystyle N_{(T1)}\)を用いました。
\(\displaystyle Nr_{(T0)}\)から温度補正換算をした値を用いた結果、どうしても特性が合わなかったためです。
これは今後も精査要と考えています。
今後、n数を増やしたら異なる結果となることも念頭に置く必要がありそうです。

N(Is, Isrの換算のみで使用)

\(\displaystyle N_{(T1)}=N_{(T0)}*(1+\color{red}{Tn}*(T1-T0)\)

変数の説明

このパラメータは\(\displaystyle \color{red}{Is_{coff}}\)と\(\displaystyle \color{red}{Isr_{coff}}\)で使用します。
ダイオードのパラメータとしての\(\displaystyle N\), \(\displaystyle Nr\)は基準温度で決定した値(大抵25℃:データシートによる)をそのまま使用します。

\(\displaystyle N_{(T1)}\):温度T1の時のEmission coefficient
\(\displaystyle N_{(T0)}\):
 温度T0の時のEmission coefficient.(過去記事内容で決定)
 大抵T0は25℃(メーカのデータシートによる)
\(\displaystyle \color{red}{Tn}\):温度係数

VJ

\(\displaystyle VJ_{(T1)}=\frac{T1}{T0}VJ_{(T0)}-2\frac{k*T1}{q}ln(\frac{T1}{T0})^{1.5}-(\frac{T1}{T0}Eg_{(T0)}-Eg_{(T1)})\)

\(\displaystyle Eg_{(T)}=\color{red}{Eg_{(0)}}-\frac{\color{red}{\alpha}*T^2}{\color{red}{\beta}+T}\)

変数の説明

\(\displaystyle VJ_{(T1)}\):温度T1の時のJunction potential
\(\displaystyle VJ_{(T0)}\):
 温度T0の時のJunction potential.(過去記事内容で決定)
 大抵T0は25℃(メーカのデータシートによる)
\(\displaystyle Eg_{(T)}\):
 温度Tの時のactivation energy(活性化エネルギー)
 TにT0,T1を代入
 各係数は次の値を使用

\(\displaystyle Eg_{(0)}\):1.16eV[eV]
\(\displaystyle \color{red}{\alpha}\):7.020E-04[eV/K]
\(\displaystyle \color{red}{\beta}\):1.108E+03[K]
上記の値は参考文献3,参考文献4より確認してます

【その他所感】
活性化エネルギーにおいて、パラメータ\(\displaystyle Eg_{(0)}\)、\(\displaystyle \color{red}{\beta}\)や\(\displaystyle \color{red}{\beta}\)は今後も精査要と考えています。
これも私の推測ですが、昨今は半導体の製造技術の進歩が目覚ましく、特に使用される材料関連が多岐にわたりつつあると感じているためです。
そのため、spiceパラメータにおいても上記値のみで一概にいえないのでは、と考えています。

m

\(\displaystyle m_{(T1)}=m_{(T0)}*(1+\color{red}{TM1}*(T1-T0)\)

変数の説明

\(\displaystyle m_{(T1)}\):温度T1の時のJunction potential
\(\displaystyle m_{(T0)}\):
 温度T0の時のGrading coefficient.(過去記事内容で決定)
 大抵T0は25℃(メーカのデータシートによる)
\(\displaystyle \color{red}{TM1}\):温度係数

この補正式は参考文献3で確認しています。

BV

\(\displaystyle BV_{(T1)}=BV_{(T0)}*(1+\color{red}{Tb1}*(T1-T0)\)

変数の説明

\(\displaystyle BV_{(T1)}\):温度T1の時のReverse breakdown voltage
\(\displaystyle BV_{(T0)}\):
 温度T0の時のReverse breakdown voltage(過去記事内容で決定)
 大抵T0は25℃(メーカのデータシートによる)
\(\displaystyle \color{red}{Tb1}\):温度係数

LTspiceのHelpを参照すると、LTspice自体に\(\displaystyle BV\)用の温度係数\(\displaystyle Tb1\):温度差の線形増加用の係数と\(\displaystyle Tb2\):温度差の2乗で変化するを備えていますが、今回は使用しませんでした。
理由は次の2点です。
・温度差の2乗の項はコントロールが難しい(今回は手作業のパラメータ調整のため)
・私としては定義の内容を明示したかった
 LTspiceのHelpに表記されている”Units(単位)”と参考文献4の\(\displaystyle BV\)の式より、おそらくLTspiceの内部に組み込まれているモデル式も同様と考えていますが、はっきりとそのモデル式である、ということが確認できなかったため、今回の場合は\(\displaystyle Tb1\):温度差の線形増加用の片側のみを使用するに至りました。

実装方法

パラメータの入力部分に上記の数式を入力します。具体的には次の画像を参照してみてください。
回路はシンプルですが、色々と記述内容が多くなるため、func文で記述の構成を分け&問題が発生した時の切り分けがしやすいようにすると良いです。

イメージはこちらの通りです(クリックで拡大、キーボードで画像移動できます、再掲含む)。

この辺はプログラミング的な思想が入ると思います。
spice系においても例外ではなく、プログラミングのアルゴリズムやデータ構造を考えるように、記述を分かりやすく構造化することは、望ましいことです。

ただ、実際は一度記述ができてしまえば、変更する箇所はパラメータがほとんどで、長々とした式は変更をしなくなります。
また、記述の規模もC, Python, VBAやVB.netなどに比べれば非常に少ない行数(※)ですんでしまいますので、多少ダラダラとした表記でもちょっと時間をかければ辿れてしまう(全体を把握できてしまう)のが実際です。
※実際は記述が点在する表記となるため、行数と言っていいのか分かりませんが、便宜上そういいました

この記事を読んでいるあなたの都合にあわせて構造の精度, 表記をきめていってください。

参考文献

  1. 1SV229(2014), 東芝デバイス&ストレージ株式会社
    https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/product/diodes/detail.1SV229.html
  2. 1SS387(2022), 東芝デバイス&ストレージ株式会社
    https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/product/diodes/detail.1SS387.html
  3. Semiconductor Device Modeling with SPICE SECOND EDITON, GIUSEPPE MASSOBRIO, Tata McGraw Education Private Limited, 1993
  4. SPICE Diode, Help Center, The MathWorks, Inc.
    https://jp.mathworks.com/help/sps/ref/spicediode.html
  5. D. Diode, LTspiceHelp, Analog Devices Inc, 1998-2022
  6. 北川章夫(1998 ), ダイオードのモデリング, 北川ホームページ
    http://jaco.ec.t.kanazawa-u.ac.jp/edu/vlsi/spidev/diode.html

変更履歴

2023/12/242023/12/30

いったん必要最低限の内容ができ形になったため、先行で記事UP

・冒頭部
 途中が途中である表記を削除
・章「パラメータの温度補正換算式」
 パラメータRsを追加(先行で記事をUPした際に記載忘れていました)
 該当パラメータの色を赤に表示
 各パラメータの補足説明を追加
・章「実装方法」
 デフォルトの画像の大きさを大きくした

コメント スパム対応をしたつもり、コメントは残す方向で頑張ってます

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